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風土に根ざした設計思想?― その2

高層マンション 建替えの論理

 港南台うぐいす団地の建替え事業によって生まれようとしている高層マンションの名称は「ブランズシティ港南台 うぐいすの杜」。新年の始動までのツナギ第2弾として、その計画の一端を東急不動産の昨年7月のニュースリリースで覗いてみることにします。

「港南台うぐいす住宅マンション建替事業」本体工事着工
~環境配慮、地域貢献をテーマにした新たなマンションとして再生します~

港南台うぐいす住宅マンション建替組合(理事長:白神武男)及びその参加組合員である東急不動産株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:金指潔)は、かねてより、マンション建替え円滑化法に基づき、「港南台うぐいす住宅マンション建替事業」に取り組んでまいりましたが、本日、本体工事に着手いたしましたのでお知らせいたします。
◆住民主導で建替を検討し、ついに事業化(略)
◆度重なる合意形成を経て、ついに組合設立認可を成就(略)
◆粘り強く事業を推進し、賛成多数で本体工事着手へ(略)
◆「港南台うぐいす住宅」が環境に配慮した新たなマンションとして再生へ
「港南台うぐいす住宅」は、JR根岸線「港南台」駅徒歩2分、駅前商業施設と周辺に広がる一戸建て住宅地をつなぐエリアに位置し、交通利便性・生活利便性に秀でたマンションです。前述のとおり、築年数や時代背景の変化による建物の構造上の問題や設備の劣化・陳腐化により、建替えを実施することとなりました。
現在計画中の施行再建マンションでは、耐震等級2(一般的なマンションは耐震等級1)を取得し高い耐震性を備え、専有部分には、CO2排出量削減を図るため、LED照明、エコジョーズ、LOW-Eガラスの採用を計画しております。また共用部分においても、壁面緑化等も施し、屋上庭園等、環境配慮に取り組んだ商品企画を目指します。
さらに新しい取り組みとして、辻広場に炊き出し用にかまどベンチの設置や、消防水利用の防火水槽以外に非常時の生活用水用の貯水槽60トンを設置する他、非常時に仮設テントを設置できるスペースを備えることなどで地域の防災拠点として整備する他、24時間有人管理という管理体制を活用し、駅へのアクセスの要となる南東、南西、北西の街角に管理員室に繋がるインターホン機能の付いた防犯灯を設置することなどで防犯拠点としての整備を実施することで、周辺の皆様に喜ばれ、地域貢献できる施行再建マンションとなる予定です。
◆マンション建替え事業の今後の取り組み(略)

 さて、……「周辺の皆様に喜ばれ、地域貢献できるマンションとなる予定」という宣伝文句、その内容、あなたはどう受け止めますか?(M&M)

風土に根ざした設計思想?

 基地の町 もうひとつの注目点

 上郷開発問題や港南台駅前の「うぐいす団地」の高層化建替え問題などに関連して、掲示板コーナーで開発と環境、そして「まちづくり」のルールを考える投稿と意見交換が続けられていますが、2010年が環境問題をめぐる新しい飛躍の年であることを願う観点から、新年の始動までのツナギとして1枚の写真をお届けします。 

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 名護市庁舎(沖縄県)
 鉄骨鉄筋コンクリート造り3階建〔軒高14.6㍍ 最高21.6㍍〕
 敷地面積12,201.1 ㎡ 延床面積6,149.1㎡。

 ……米軍の普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設の移設先として全国的に注目を浴びている、あの名護市の市庁舎です。
 名護市は人口わずか6万人の小さな町ですが、実は米軍基地の辺野古沖への移転問題、またそれを争点の一つに行われる市長選(1月24日投開票)とは別に、ぜひこの市庁舎の建物そのものにご注目ください。(あいにく未見ですが)

 昭和45年(1970)、1町4村の合併により名護市が発足。庁舎は市政施行10周年の記念事業として昭和55年(1980)3月に着工、翌昭和56年4月に竣工しました。落成後すでに30年近い歳月を経ているわけですが、今ではすっかり地域の風物自然と一体化し、市民サービス&地域自治の拠点として市民に愛されているそうです。
 さて、この市庁舎の設計コンセプトが「光と風と太陽と緑」。風土に根ざした設計として話題となった建物なのでご記憶の方もあると思いますが、設計は「象建築集団」という建築グループ。昨年12月、本ブログの掲示板で『小さな建築』というタイトルの本を紹介した富田玲子さんが所属する建築家グループの代表的な作品なのです。

 でも、なぜここで名瀬市庁舎なのか?
 富田さんは前記の本の冒頭で「小さな建築」について断り書きをしています。つまり「小さな建築」とは、寸法が小さいことではなく、心身にフィットする建築という意味なのですね。
「土地の気持ちに合う」「人の気持ちに合う」ものを、建築に携わる人たちはつくらなくてはいけない、というのが建築家としての富田さんのモットー。したがって例えば11階ぐらいが足で上り下りできる限度であり、なおまた木よりも建物が低いことをひとつの条件に挙げたりします。

 さて実際はどうだったのか。
 市庁舎建設のコンペには全国から308案もの応募が第1次段階においてあり、このうち5案を選出して2段階目の競技を行った結果、Team Zoo(象設計集団+アトリエ・モビル)の設計案が入選と決定したそうです。
 設計の条件としては、敷地の立地条件、気象条件を生かすことはもちろん、省資源、省エネルギーを考慮し、大規模な空調方式に頼らないこと、地場材料・地元の施工技術を使いこなすこと、社会的弱者への配慮を行うこと、等々。
 百聞は一見にしかず。理念と実際のギャップ、またそれが市民にどう受け止められているか、あいにくナマの声を聞くことはできませんが、地域社会における公共建築物あるいは大規模建築物がどうあるべきか、多くのサジェスチョンがここにはあると思うので、名護市役所のHPからそのコンセプトを転載します。(M&M)

(3)計画の4つの柱  
 ア 連続する地域環境の中で・・・    
  (ア)新しいアサギ広場をまちの中に     
   アサギ広場にこそ沖縄のコミュニティが凝縮されている。市庁舎は、まちにそびえる白亜の殿堂ではなく 
  「むらからまちへと連続する地域環境の文脈」のなかで捉えたい。市庁舎は新しいアサギ広場が必要である。
  (イ)アサギの形態が建築のストラクチャーを決定する     
   アサギの建築様式は、軒が深く屋根を柱で支えている素朴なものである。これが風を取り入れ強い日差しか
  ら守る沖縄の建築の原点である。この原点を市庁舎のストラクチャーとして形態と平面を決定していった。
 イ 市民に開放された庁舎 略    
 ウ 2つの表情をもつ庁舎     
   (ア)大自然に呼応する環境構造線による敷地計画      
   名護岳、嘉津宇岳、名護湾、21世紀の森公園を結ぶ4本の軸線が、まちにひらく大広間、公園から湾にひ
   らく日陰の広場、アサギテラスの方向性を決定する。
   (イ)まちに向かうヒューマンスケール     
   住宅やマチヤグワァ、小ビルの建ち並ぶ街並みに連続する市庁舎の表情はアサギテラスの積層するヒューマ
   ンスケールの世界だ。     
   (ウ)海に向かうスーパースケール     
   南側は国道バイパス、21世紀の森などの広々とした大スケールの環境が広がる。市庁舎の表情はこれらに   呼応して、すくっと立ち上がるのびやかな表情をもつ。  
 エ 光と風と太陽と緑     
   (ア)風のミチをつくる     
   外廊下、室内を貫通する風のダクト、高い欄干と床上の通風孔を交錯させ風のミチをつくる。
   (イ)熱をさえぎる屋根      
   二重スラブ、土をのせた屋根、アサギテラスのルーバーなどは、太陽熱を遮断する。
(ウ)光と熱と緑が建物の表情をつくる     
   アサギのルーバーが落とす小さな日陰、公園に連続するピロティの大きな日陰など、人のあつまりに応じた   いろいろな日陰をつくる。アサギのルーバーはブーゲンビレアやウッドローズがからみ緑で市庁舎をおおう   こともできる。    
   (エ)分舎式の間取り 略    
 
 
  注:アサギテラス=アサギは沖縄古来の神を招いて祭祀を行なう場所のこと。
プロフィール

上郷/署名の会

Author:上郷/署名の会
横浜7大緑地の1つ「瀬上市民の森」に連なる瀬上沢はホタルの自生地として知られ、貴重な動植物が生息する自然の宝庫です。またみどり豊かな里山風景を今に残し、古代の製鉄遺跡や江戸時代に使われた横堰などの文化遺産も眠る横浜市民共有の財産とも言うべき緑地です。
その瀬上沢に大規模な上郷開発計画が浮上したのは2005年。瀬上沢を愛し、それぞれに保全運動をしてきた市民は、2007年6月に「上郷開発から緑地を守る署名の会」を結成、開発計画の中止と緑地の全面保全を求める活動を開始し、同年12月、市内全域はもとより全国各地から寄せられた92000筆あまりの署名を添えて横浜市長と市議会に陳情書を提出しました。
2008年9月、横浜市都市計画審議会は計画を承認せず、「上郷開発事業」は中止となりました。しかし地権者でもある開発事業者・東急建設は引き続き「開発の意思」を表明。2012年1月、ついに第3次開発計画の事前相談書を横浜市に提出しました。私たち「署名の会」はあらためてこの開発プランの問題点を指摘、瀬上沢の全面保全を求めて新たな活動を開始しました。
そして2014年1月に始まった新たな動きがいま地域の住環境・自然環境を揺るがす重大な岐路に……。

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