検証:次世代郊外まちづくり 序
スマートコミュニティって何? 先進地・北九州市の取り組みから

「官営八幡製鉄所」創業地に立つ第1高炉

開発が進むJRスペースワールド駅付近
暮れも押し迫った12月20日、横浜市は東急電鉄との協働プロジェクトとして「次世代郊外まちづくり」についての取り組みについて記者発表を行いました。
とりわけ横浜市が「次世代郊外まちづくり」の主要な取り組み策として掲げ、また東急電鉄の系列企業である東急建設が上郷開発における「まちづくり」のコンセプトとして引用したことから、「スマートコミュニティ」という言葉が注目されています。
しかし市による記者発表資料によれば、「次世代郊外まちづくり」の取り組みを、環境未来都市計画の主要なプロジェクトとして位置付けているとはいうものの「スマートコミュニティ」はその規模や構想において限定的で、本格事業への道筋はまだ不透明です。
*横浜市の取り組み(たまプラーザ地区:記者発表資料URL)
http://www.city.yokohama.lg.jp/ondan/press/h24/121220/121220press.pdf
ここでは横浜と並んで「環境未来都市」に選ばれ、「スマートグリッド」先進地として知られる北九州市における「スマートコミュニティ」への取り組みの一端を比較検討資料として紹介します。
北九州市 人口 約 97万人(約 42万6000世帯)
横浜市 人口 約370万人(約160万7600世帯)
北九州市の取り組み
北九州スマートコミュニティ創造事業の概要 *同市HPから
政府の新成長戦略に位置づけられる日本型スマートグリッドの構築と海外展開を実現するための取組みである、「次世代エネルギー・社会システム実証」を行う地域について、国が公募し、本市を含む全国20地域が提案したところ、平成22年4月、本市が全国4地域の一つとして選定されました。
平成22年8月、提案した「北九州スマートコミュニティ創造事業」のマスタープランを策定し、現在、参画企業とともに事業を推進しています。
1 事業名 北九州スマートコミュニティ創造事業
2 実施主体 北九州スマートコミュニティ創造協議会 (北九州市、新日鐵住金(株)、日本アイ・ビー・エム(株)、富士電機(株)、 (株)安川電機、(株)日鉄エレックスなどで構成)
3 実施地区 八幡東区東田地区(約120ha)
4 実施期間 平成22年度~26年度(5年間)
5 CO2削減目標 市内標準街区と比較して、2014年までに2005年比50%減
6 事業数 38事業
7 総事業費 163億円(5年間)
8 基本的な考え方
・電力の需要家(家庭やオフィスなど)が地域のエネルギー利用を「考え」「参加」する仕組みを構築すること。
・水素や工場廃熱など隣接する産業のエネルギーを地域で有効に活用すること。
・家庭のみならず、工場、オフィス、商業施設、ガソリンスタンド、データセンター、博物館など多様な施設に省エネシステムを導入すること。
・エネルギーのみならず、交通システム、緑化、地域コミュニティまで含めた「まちづくり」としての取組みを推進すること。
・実証の成果を国内及びアジア等の海外へ展開すること。
9 取組みの特徴
・電力の需給に応じて電力料金を変化させるダイナミックプライシングの実証。
・通信機能や他の機器の管理機能を持つ高機能電力メーターであるスマートメーターの大量導入。
・工場の生産プロセスから発生する副生水素や、工場の廃熱などをエネルギーとして地域で利用。
・太陽電池や燃料電池などの直流で発電する電源を有効に活用できる直流電流住宅などの整備。
・低炭素化社会の交通システムとして、EV(電気自動車)の大量導入、非接触EV充電器の整備、オンデマンドバスの導入など。
・市民、学校、来訪者等に対する効果的な環境学習システムの整備。
【参考】「スマートコミュニティ」「スマートグリッド」とは ITを活用して電力の需給の最適化を図り、電力の安定供給を実現するための送配電線網が、「スマート(賢い)グリッド(送電網)」です。欧米では今後の成長戦略に位置づけ、各地で実証事業や試験導入が行われています。また、スマートグリッドなどの電力だけでなく、熱エネルギーの有効利用や交通システムも含め、人々のライフスタイル全体を視野に入れた社会システムが「スマートコミュニティ」です。
《追記》
たまたま昨年12月初旬、脱原発=エネルギー・シフトへの取り組みについて学ぶ目的で釜山・敦賀・沖縄(糸満)・北九州の各地などを訪ねるツアーに参加しました。
とりわけ「スマートコミュニティ」への取り組みが進む北九州市八幡東区東田地区は「脱電力会社の壮大な実験」(アエラ2012.11.12号)として注目されるまちとして、国内外からの視察が絶えないようです。
写真の東田第1高炉は、明治34年(1901年)に操業を始め、幾たびかの改修工事を繰り返しながら産業を支える鉄を作り続けてきた記念碑で、現在の高炉は昭和47年(1972年)に役割を終えた第10次改修高炉を保存整備したもの。北九州市では東田第1高炉一帯を指定文化財(史跡)に指定し史跡広場として公開しています。(編集担当:M&M)
なお詳しく知りたい方は以下のサイトへ。
北九州市HP
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf

「官営八幡製鉄所」創業地に立つ第1高炉

開発が進むJRスペースワールド駅付近
暮れも押し迫った12月20日、横浜市は東急電鉄との協働プロジェクトとして「次世代郊外まちづくり」についての取り組みについて記者発表を行いました。
とりわけ横浜市が「次世代郊外まちづくり」の主要な取り組み策として掲げ、また東急電鉄の系列企業である東急建設が上郷開発における「まちづくり」のコンセプトとして引用したことから、「スマートコミュニティ」という言葉が注目されています。
しかし市による記者発表資料によれば、「次世代郊外まちづくり」の取り組みを、環境未来都市計画の主要なプロジェクトとして位置付けているとはいうものの「スマートコミュニティ」はその規模や構想において限定的で、本格事業への道筋はまだ不透明です。
*横浜市の取り組み(たまプラーザ地区:記者発表資料URL)
http://www.city.yokohama.lg.jp/ondan/press/h24/121220/121220press.pdf
ここでは横浜と並んで「環境未来都市」に選ばれ、「スマートグリッド」先進地として知られる北九州市における「スマートコミュニティ」への取り組みの一端を比較検討資料として紹介します。
北九州市 人口 約 97万人(約 42万6000世帯)
横浜市 人口 約370万人(約160万7600世帯)
北九州市の取り組み
北九州スマートコミュニティ創造事業の概要 *同市HPから
政府の新成長戦略に位置づけられる日本型スマートグリッドの構築と海外展開を実現するための取組みである、「次世代エネルギー・社会システム実証」を行う地域について、国が公募し、本市を含む全国20地域が提案したところ、平成22年4月、本市が全国4地域の一つとして選定されました。
平成22年8月、提案した「北九州スマートコミュニティ創造事業」のマスタープランを策定し、現在、参画企業とともに事業を推進しています。
1 事業名 北九州スマートコミュニティ創造事業
2 実施主体 北九州スマートコミュニティ創造協議会 (北九州市、新日鐵住金(株)、日本アイ・ビー・エム(株)、富士電機(株)、 (株)安川電機、(株)日鉄エレックスなどで構成)
3 実施地区 八幡東区東田地区(約120ha)
4 実施期間 平成22年度~26年度(5年間)
5 CO2削減目標 市内標準街区と比較して、2014年までに2005年比50%減
6 事業数 38事業
7 総事業費 163億円(5年間)
8 基本的な考え方
・電力の需要家(家庭やオフィスなど)が地域のエネルギー利用を「考え」「参加」する仕組みを構築すること。
・水素や工場廃熱など隣接する産業のエネルギーを地域で有効に活用すること。
・家庭のみならず、工場、オフィス、商業施設、ガソリンスタンド、データセンター、博物館など多様な施設に省エネシステムを導入すること。
・エネルギーのみならず、交通システム、緑化、地域コミュニティまで含めた「まちづくり」としての取組みを推進すること。
・実証の成果を国内及びアジア等の海外へ展開すること。
9 取組みの特徴
・電力の需給に応じて電力料金を変化させるダイナミックプライシングの実証。
・通信機能や他の機器の管理機能を持つ高機能電力メーターであるスマートメーターの大量導入。
・工場の生産プロセスから発生する副生水素や、工場の廃熱などをエネルギーとして地域で利用。
・太陽電池や燃料電池などの直流で発電する電源を有効に活用できる直流電流住宅などの整備。
・低炭素化社会の交通システムとして、EV(電気自動車)の大量導入、非接触EV充電器の整備、オンデマンドバスの導入など。
・市民、学校、来訪者等に対する効果的な環境学習システムの整備。
【参考】「スマートコミュニティ」「スマートグリッド」とは ITを活用して電力の需給の最適化を図り、電力の安定供給を実現するための送配電線網が、「スマート(賢い)グリッド(送電網)」です。欧米では今後の成長戦略に位置づけ、各地で実証事業や試験導入が行われています。また、スマートグリッドなどの電力だけでなく、熱エネルギーの有効利用や交通システムも含め、人々のライフスタイル全体を視野に入れた社会システムが「スマートコミュニティ」です。
《追記》
たまたま昨年12月初旬、脱原発=エネルギー・シフトへの取り組みについて学ぶ目的で釜山・敦賀・沖縄(糸満)・北九州の各地などを訪ねるツアーに参加しました。
とりわけ「スマートコミュニティ」への取り組みが進む北九州市八幡東区東田地区は「脱電力会社の壮大な実験」(アエラ2012.11.12号)として注目されるまちとして、国内外からの視察が絶えないようです。
写真の東田第1高炉は、明治34年(1901年)に操業を始め、幾たびかの改修工事を繰り返しながら産業を支える鉄を作り続けてきた記念碑で、現在の高炉は昭和47年(1972年)に役割を終えた第10次改修高炉を保存整備したもの。北九州市では東田第1高炉一帯を指定文化財(史跡)に指定し史跡広場として公開しています。(編集担当:M&M)
なお詳しく知りたい方は以下のサイトへ。
北九州市HP
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf