評価委は提案却下に向け厳しい審査を 「安心安全」が都市計画の前提条件だ 「速報」でお知らせしたように、上郷開発を狙う都市計画提案の「採否」について検討・審議する横浜市の都市計画提案評価委員会は坂和建築局長を議長に24日午前に開いた会合で、各局の評価委員から「提案を判断する際に必要な資料が不足している」との指摘が出たことから、市は28日付けで開発事業の提案者である東急建設に対して追加資料の提出を求め、同社からの資料の提出をまって次回会合を開くことになりました。
評価委員メンバーは委員長である建築局長のほか環境創造局政策調整部長はじめ道路局計画調整部長など8名の常任委員に加え、「その他提案内容に関連する局区の関係部長」16名の計24名で構成されています。(24日はこのうち22名が出席)
市による東急建設に対する通知書及び追加資料要求の詳細については情報公開請求により開示を求めていきますが、今回の評価委には危機管理室からも委員が名を連ねており、私たちが繰り返し指摘・追及してきた上郷開発予定地の地理的・地形的な様々な問題点について、東急建設がどのような資料を提出、また崖地および造成地の危険性に直面し調査に入った建築局はじめ関係部門の委員がどのような判断を下すか、ことは市民の安心安全という市政の根幹にかかわる課題であるだけに引き続き厳しい注視(監視?)が必至です。
*資料:横浜市都市計画提案評価委員会委員
(1) 建築局長
(2) 環境創造局政策調整部長
(3) 環境創造局みどりアップ推進部長
(4) 建築局企画部長
(5) 建築局建築指導部長
(6) 都市整備局企画部長
(7) 都市整備局地域まちづくり部長
(8) 都市整備局の提案区域を所管する部長
(9) 道路局計画調整部長
(10) その他提案内容に関連する局区の関係部長
評価委開催を報ずる『タウンニュース』栄区版10月30日号

ようやく始まる崖地の危険度調査 『読売新聞』横浜版10月24日号
無定見なゴーサインを排す 「評価委」開催を目前にしての心配
緊急寄稿=署名の会:M1&M2
民間からも都市計画の提案ができるという都市計画提案制度により、東急建設㈱が横浜市に提案している「上郷猿田地区都市計画提案」の諾否をきめる都市計画提案評価委員会(評価委)がいよいよ24日に開かれる。
都市計画提案の問題点について環境部門、都市計画部門、河川部門、道路部門、あるいは地元の区など行政機関の各セクションと継続してきた議論では、最近は次々に新しい問題が発生しており、従来の課題は山積みで解決していない。
評価委員会がこうした問題について十分な検討を加えないまま、無定見にゴーサインを出す可能性があることが心配だ。次の指摘はその心配のほんの一部である。
1 計画は許認可の形式的要件を満たしていない
① 「整開保」を含む線引変更については行政が責任を持って行うべき行為であって、民間事業者が「まちづくり」の基本である線引(区域区分)の変更を提案することはなじまない。都市計画提案制度そのものは一つの手法として可としても、線引変更提案という提案はいわば脱法行為?である。行政機関はこの点について自覚をもって毅然として矜持を持って判断すべき事案である。
② 現行の「都市計画の整備、開発および保全の方針」(整開保)のもとで認可されることはない提案である。都市計画提案は仮に審査できたとしても許可できない案件である。神奈川県、横浜市においてそれぞれの議会で確認されている通りである。将来の法的環境が変化することを期待して、つまり将来整開保が改定されることを期待して都市計画提案を行ったとすれば、現行の整開保が生きているのであるから、本来ならば窓口却下とされるべき案件であった。
③ 市街化調整区域においては原則的に開発は抑制される。当該開発事業計画予定区域は「平成27年までに市街化をはかる区域に位置づけられていない」(平成24年3月助言書)とされている。こうした整開保の現状規定があり、また都市計画審議会の専門部会である線引小委員会で検討が行われているとしても、線引変更の将来は未定であり、27年以降の許認可を求める提案は法的根拠を持たず、許認可は法的効果を持ちえない。
2 開発計画の危険性は予見されており、横浜市の民事責任が発生する
都市計画提案に関する住民説明会、公聴会、アセス審査の過程で当該事業計画による軟弱地盤、液状化、洪水の危険性などが指摘されてきたが、これらに対する行政の対応は不十分である。このところ地球規模の気象変動により従来と異なる激甚な自然災害が多発しているが、横浜市においても都市開発のひずみを顕在化させる形で自然災害が発生している。いたち川の増水もかつてないほど脅威となってきた。行政の立場として、現行の法令に適合している以上は法令の基準に従って認可せざるを得ないと抗弁(強弁)している。
しかし50ミリを超える降雨が常態となっている現在、市民の安心安全を第一とすべき行政が、法令の不備を見過ごしにして、「予見できなかった」とか「想定外であった」という逃げ口上を云うことは許されない。瀬上という豊かな緑地を破壊するということだけにとどまらず、市街化を抑制すべきとされてきた市街化調整区域の大本の条件を変えて危険な宅地造成を認可しようとする行為について、許認可権を有する横浜市当局が、市民にたいする安全配慮義務を怠ったという行政法上、民事法上の責任が発生することを指摘しておきたい。
3 計画は、周辺住民の概ねの賛同は得られていない
都市計画提案を評価する指針として「周辺住民との調整および概ねの賛同が得られること」とされているが、公聴会における異例かつ意図的な世論誘導?を指摘するまでもなく、周辺住民の概ねの賛同とは云える状況ではない。平成19年時点の2回目の開発計画案に対しては9万余の反対署名があり、今回の提案に対しては前回にまさる11万余の反対署名が市長・市会に寄せられた。東急建設㈱は公聴会において「概ねの賛同」の世論を作り上げようとしたが、地権者サイドの仲間内の盛り上がりをもって周辺住民・地域住民の賛同を得たとすることはできない。それでも評価委は賛同があったことを前提に評価(提案採択)するのであろうか。
*資料:公聴会の事務局である建築局都市計画課によれば公述の申出件数2,518件(有効人数は2,478名)、その内訳は次の通り。
A: 1,895(開発賛成) B: 511(開発反対) CDE:72(その他)
■速報(2014.10.27追記)
今回の評価委の事務局となった都市計画課筋からの情報によれば、24日(金)午前10時から開かれた評価委は「審議を進めるにあたり、事業者サイドはじめ関連資料をもっと集めて慎重な判断に繋げる」との方向性を確認し散会したとのこと。必要とされる資料、今後の委員会の開催日程など具体的な事項については情報が届き次第レポートします。
開発の問題点、直視を! 7日、区長との懇談で申し入れ
10月7日午後、守る会&署名の会の世話人代表はじめ有志7名は上郷開発計画の地元である栄区の尾仲富士夫区長と1時間半にわたり懇談する機会を得ました。
区長は冒頭、開発事業計画が審査段階に入っていることを理由に、上郷問題に関する意見は述べないとのことでしたが、開発計画地のアセス審査の不備と軟弱地盤問題及び開発の及ぼす水害発生への悪影響など、私たちの指摘は区民生活に直結する問題であるだけに、さまざまな角度からの私たちの意見に耳を傾け、私見と断りつつ環境創造局時代の経験をふまえ柔軟に意見交換に応じました。
ただし、区サイドへは私たちの本庁各セクション宛の質問書提出とその回答をめぐる具体的な経緯は伝わっておらず、「蚊帳の外」といった様子が窺えたことも事実。
横浜市では悪しき?慣例として区長はじめ職員はほぼ3年で他セクション、また他の区へ異動してしまい、区民が直面する暮らしにかかわる積年の課題については対応が「お役所仕事」的に積み残しされがち。
他の区の事例とはいえ台風18号による土砂災害はまさにそうした中で深刻な事態を招いてしまったわけで、金沢区についで危険地帯?を多くかかえる栄区では上郷開発計画がはらむ土地の歴史由来の土砂災害あるいは水害への懸念について、区政をあずかる区長や評価委のメンバーとして審査にあたる副区長は曇りの無い眼で直視し、問題提起してほしいもの。
以下、長いのですが、この間の問題点を整理する資料として、区長宛に手交した文書を。(A4で5ページ)
■資料:尾仲富士夫区長に手渡した文書 *テキスト形式で処理
2014年(平成26年)10月7日
横浜市栄区長
尾仲 富士夫 様
上郷開発から緑地を守る署名の会
代表世話人 皆川 昭一
上郷・瀬上の自然を守る会
代表世話人 井端 淑雄
上郷猿田地区都市計画提案に関する両会の考え方など
日頃から区政運営にあたっては、鋭意取り組みいただき感謝しています。
取り分け、地元においてここ数十年にわたって続いている開発問題、また少子高齢化にともなう
郊外地区の過疎化問題等、地域社会の直面する諸課題については、格別の留意をいただいてい
ることと存じます。
さてご承知のように、東急建設による上郷猿田地区都市計画提案は今年1月に受理され、その
後、説明会、公聴会、アセス審査会答申、市長意見書提出を経て、都市計画提案評価委員会開
催に向けた手続きが終了しています。
そこで、この開発に対する私たちの考え方と、自然災害への誘因となることが懸念される開発計
画地の現状および問題点などを地元の市政担当責任者にお伝えし、都市計画提案評価委員会に
おいて、一地権者の開発事業への利害にとらわれない公平かつ先見性ある意見表明など、その
役割を果たしていただきたくお願いする次第です。
1.開発提案の採否について
(1) 人口減で住宅地の量的拡大というニーズがない中、生物多様性に富み歴史的遺産が残され
た、市街化調整区域の貴重な緑地を破壊してまで開発を誘導する必要はありません。さらに、人
口フレームなど法的な要件も整っておらず、 横浜市はこの提案を採択しないことを求めます。
(2) 私たちは横浜市が、行政として長期的な展望に立った的確な判断を敢然と示すことを望んで
います。
2.東急建設の主張に対する考え方
・東急建設意見
開発は各種の法規に整合している。その根拠として、整備開発保全の方針の市街化調整区域
の土地利用方針に記されている「骨格的な都市基盤施設等の整備にあたっては、無秩序な市街
化を防止しつつ、周辺土地利用の計画的な保全、誘導を行う。」及び、横浜市マスタープランの
「区域区分設定の基本的考え方」に記されている「市街化区域への編入については、都市の成長
や活性化など、横浜市の施策に資する計画的な市街化整備が確実な区域」を引用。
・私たちの意見
「市街化調整区域では開発を抑制する」とした都市計画区域規制の基本理念からして、開発を
行なうにあたっては、人口の動向を見据えたうえで住宅地のニーズを確かめ、もし必要なら市街
化区域に割り当てるのが一義的であり、それでも不足するならば、という厳しい条件が付くはず
です。
さらに「市街化調整区域の土地利用方針」には、独立して イ「 災害防止の観点から必要な市
街化の抑制に関する方針」という項目が設けられ、「浸水等の災害を防止するため、河川流域
内の保水・遊水機能を有する地域の保全に努める。」と記されています。すなわち、市街化調整
区域の存在は、自然災害を未然に防止するための緩衝地帯としての役割を負っているとされて
います。
今回東急建設によって提案された開発計画地の殆どが、過去において既に盛土がなされた
軟弱地盤地帯であり、その上に14mもの盛土造成を行なえば地滑りや液状化が危惧されること、
また開発による水害の増幅の可能性を考えると、まさに、防災の目的で保全すべき市街化調整
区域の緑地を破壊して、災害の発生源としてしまう愚を犯すことになりかねません。(下記3、4
参照)
・東急建設意見
駅と周辺住宅地との間の結節地点に、住宅地や便利な商店・医療施設などができ、地域の発
展に資する。
・私たちの意見
辛うじて残された周辺住宅地の商店や医院が立ち行かなくなることが危惧されます。横浜とい
う都市の郊外部ですら限界集落の発生が見えてきています。これは、人口動向などの長期的
展望が十分でなく、高度成長期に無秩序に拡大させた住宅地について、問題が全国的に顕在
化してきているものです。
行政には、地権者が主張する小手先の利便性提供に左右されることなく、広い視野で地域コ
ミュニティ全体を俯瞰した「まちづくり」を設計するよう切望します。
・東急建設意見
都市計画道路舞岡上郷線建設にあたって、横浜市は地権者に「開発を将来的に認める」と
約束をしたのが、延び延びになってしまっている。横浜市は約束を守るべきである。
・私たちの意見
横浜市は、そのような約束が正式に存在するのならば、市民に公開する義務があると考えま
す。
また、東急建設は開発理由を種々挙げても、その目的は先延ばしされた利得の取得にありま
す。横浜市は、約束の有無にかかわらず、1970年(昭和45年)に横浜市が線引きを行い市街
化調整区域とした公共財的性格が強い区域の開発を容認すべきではありません。
都市計画提案制度を用い、線引き変更を前提とした市街地開発が未だ全国で認められた例
がないのは、全国の自治体が線引きによる区分けの基本的理念を尊重しているからであると
考えられます。横浜市が全国に先駆けて、一事業者の開発に伴う利益を優先するこの提案を
認めるならば、悪しき前例となり、各地の市街化調整区域の緑地が開発の波に曝される結果
となり、その波及効果は甚大であり、取り返しがつかないものとなることが危惧されます。
3.開発計画地の軟弱地盤問題
横浜市長はアセス審査会への諮問において、その審査範囲を東急が提出した修正届に係る
部分に限定し、それ以外については2007年(平成19年)の前回のアセスを踏襲することとなり
ましたが、下記の通り問題があります。
(1) 過去の自然災害の経験から得られた、液状化マップや大規模盛土造成地調査図などの資
料がアセス審査会に提示されず、その結果地盤工学を専門とする特定の委員が「開発計画
地は埋立地ではない」と誤認したまま、十分な調査審議を経ることなく、軟弱地盤帯の調査と
対応は施工段階で行なえばよしとする答申が出され、市長はそれに基づく意見書を東急建設
に提出しました。
開発計画地の多くの部分は、過去に盛土が最大で10m以上施されており、その盛土に用いら
れた土砂の内容や正確な埋立て範囲は明かになっていないにもかかわらず、さらに最大で
14mの盛土造成を行なう計画です。
前回のアセスで吟味されていない軟弱地盤問題について、自然災害を未然に防止するべく、
開発への第一関門である今回のアセスにおいて、十分な調査と審議がなされるべきでしたが、
提案採択の前提条件を整えることを優先する結果となっています。
広島における大規模土砂災害や、今回の台風18号によるいたち川周辺の溢水・浸水を指摘
するまでもなく、昨今の気象の激化に伴い各地で想定外?の災害が発生しています。しかし災
害防止に必要な、造成に関わる法規規制は常に後追いでしか策定できてないのが現状です。
市長は、施工段階で法規類に則って施工すれば問題なしとした答申を丸呑みし、それを開発
業者に市長意見として丸投げしたわけですが、不十分な調査と審議のままでこの提案が採択
され宅地開発が行なわれた結果、将来自然災害を招くことになった場合、誰がどのように責任
を取るのでしょうか。
4.開発に起因する水害発生への悪影響
前述のように昨今日本各地において激しい降雨が急増しており、河川や下水の水害対応力の
向上が望まれますが、急な能力向上は無理なことは理解しています。神奈川県と横浜市の協調
努力により、いたち川・柏尾川は50mm対応がほぼ終了し60mm対応に向け各種の対策が進ん
でいることは喜ばしいことです。
しかしながら、2010年以来の、いたち川の城山橋における増水記録を見ると、50mm/hより遥
かに少ない雨量であっても、避難判断水位や氾濫注意水位を超えることが度々観測されていま
す。
このような実情をふまえ私たちは、いたち川・柏尾川の実際的な水害対応力について検証を
行なうことを求めて横浜市に陳情を提出しました。さらに開発に起因する水害発生への悪影響に
ついて質問もしましたが、返ってきた回答は次の通りでした。
(1) いたち川は50mm対応がほぼ終了しているので、城山橋観測点においては、50mm/hの降
雨までは水害は発生しない、というものでした。
これでは、河川設計上の見込みを答えたに過ぎず、陳情で求めた川の水害対応力の検証に
ついては、何ら答えていません。
(2) 今年3月に更新された「浸水(内水・洪水)ハザードマップ(栄区)」では、旧版の「栄区洪水ハ
ザードマップ」で青の斜線で示されていた「浸水のおそれのある区域」の表示がなくなり、代わっ
て「内水ハザードマップ」において、内水が発生するエリアが色分けで表示されています。
内水発生の想定が30年確率雨量となっていることもあって、そのエリアは旧版の「浸水のお
それのある区域」より縮小されています。
しかし、昨今の大雨の時のいたち川の増水状況から見て、旧版の「浸水のおそれのある区域」
表示のほうが、より実情を表していると思われます。
具体的には、瀬上沢がいたち川へのバイパス管に接続する近辺では、バイパス管の雨水流下
容量が5年確率雨量に見合うだけしかないため、30年確率雨量の降雨があると、浸水(内水・洪
水)が発生することが確実です。
これに対する回答は、マップ作成の根拠となる法規と、神奈川県が指定・公表したものをそのま
ま掲載したという説明に終始するだけで、私たちが陳情で求めた旧ハザードマップにあった「浸水
のおそれのある区域」の表示について何ら答えられていません。
(3) 開発を行なった後、30年確率雨量を超える降雨があった場合、水害発生の危険性が増大す
ることについて、横浜市は想定しているか否か端的な答えを求めましたが、回答は「市の条例」と
「特定都市河川浸水被害対策法」に基づき調整池の設置を指導し、下流域に負担をかけないよう
流出量を抑制するというものでした。
しかし後日、道路局河川計画・管理課と面談の席で応接した3名の職員も、そのような降雨の場
合、理論上「開発が水害発生の危険性増大要素となる」ことを認めています。
(4)横浜市は先の震災後、2013年度から危機管理室を消防局から市長部局の総務局に移しま
したが、残念ながら市民の生命財産の保全のための統合指揮という面では体制が十分ではなく、
予算も人員も削られているようです。
一例をあげるなら、危機管理室は洪水ハザードマップは自らが主管しているが、内水のハザー
ドマップは環境創造局が主管しているので担当外であるとして質問に対して言明を避け、なおまた
洪水マップは県からのデータをそのまま引用しているからと責任転嫁をしています。他方、内水担
当の環境創造局も30年確率の降雨時における瀬上沢のバイパス管への流入部の浸水について
明確な回答をしていません。
以上