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上郷開発NO! 上郷深田遺跡保全に向けて

11・27 保存求め緊急シンポジウム開催
上郷深田遺跡の歴史的意義と現状について語ろう

東京新聞による調査報道や先の市会定例会における質疑を通じて改めて浮上した都市開発と埋蔵文化財の保全問題。
高度成長期の人口急増に伴う大規模な宅地開発と道路整備の過程でその片鱗が明らかになった「上郷深田製鉄遺跡」について、その歴史的意義と発掘・保全の現状そして未来について語り合おうというシンポジウムが11月27日に開かれるとの案内が届きました。

主催は#上郷深田遺跡の保存を求める会(竹岡健治代表)。パネラーは古代史研究者の藤田武さん、同遺跡の研究者である小宮恒雄さんに加え、保存を求める会のメンバーでもある皆川昭一・署名を求める会代表世話人の3人です。
文化財保護問題に限らず、「人口減少社会」なのに「住宅過剰社会」という不思議な国に住んでいる(野澤千絵『老いる家 崩れる街』=講談社現代新書より)という、横浜の住宅・都市政策、とりわけ上郷開発問題についても考え直すきっかけになればいいのですが。

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追記:仮調査について横浜市埋蔵文化財調査委がまとめた「上郷深田遺跡発掘調査概報~都市計画道路舞岡上郷線敷設計画に伴う埋蔵文化財調査概報~」(1988.3刊)は中央・栄・磯子・金沢の4図書館に計9冊あり、館外貸し出しも可。
 

上郷開発NO! 上郷深田製鉄遺跡問題 Ver.3(11/03加筆)

深田遺跡の全容解明へ、待ったナシ
市会質疑で明らかになった現状と問題点

9月5日から10月14日まで開かれた市会の第3回定例会。決算第一特別委における長谷川悦子議員(立憲、栄区)の一連の追及によって、上郷深田遺跡問題の概要と問題点がほぼ明らかとなっています。現段階において一応分かったことを簡単にまとめてみました。

長谷川議員への教育委員会(10月4日)&道路局(同13日)の答弁の整理と問題点

1 当局答弁の整理
・暫定2車線工事区域について
①暫定2車線で供用開始した部分は横浜市が事業者(東急建設が協力)であるから、発掘調査し「概報」(1988)を作成した区域については道路局が教育委員会と調整をとりながら最終報告書(記録保存)を作成する(30年目にしてやっと! 当時の関係者が、かつてなかった画期的なことと感動した。)。
・未調査区域について
②発掘調査を中断し埋め戻した4車線拡幅部分は都市計画提案により整備(4車線化)することになっているから、開発事業者である東急建設が発掘調査をすることになる(東急建設は「横浜市の事業である」としています)。

2 答弁の問題点
・埋め戻しについての合意文書の不在
①相談して埋め戻した合意者は教育委員会と道路局である(道路局長答弁)としているが、しかし当時の合意文書は存在しない(開示請求への回答)。局長答弁の根拠が不明である。
・東急建設は埋め戻し区域の試掘調査をしていない
②東急建設の試掘調査(2019年)の際、未調査部分の試掘調査は行われなかった。東急建設がすべき発掘調査であるなら、この未調査部分の試掘調査も同時に行われるのではなかったのか。試掘調査はいつやるのか(やらせるのか)。未実施のまま4車線拡幅工事を行うなら文化財保護法違反となる。

■資料1:遺跡問題についての横浜市の責務を問うコラム(東京新聞)

  東京新聞 2022 10 23
   東京新聞 10月23日付け朝刊

注:地道な調査報道で、港北ニュータウンはじめ大規模開発の荒波に呑み込まれてしまった歴史遺産をめぐる行政の「不作為」について警鐘を鳴らした東京新聞の阿部記者が今回はコラムでこの問題を取り上げています。

■資料2:道路局関連審査(10月13日)のうち深田遺跡についての質疑詳報
注:市会HPの中継録画から該当質疑を書き起こしてあります。(文責=ブログ編集担当)

深田遺跡に関する長谷川えつこ議員の道路局への質疑
会議名:令和3年度決算第一特別委員会(道路局関係)
会議日:2022年(令和4)10月13日(木) 

長谷川委員:先日教育委員会での質疑で鯉渕教育長から、今後予定されている開発事業によって上郷深田遺跡が調査されないまま破壊されないよう、発掘調査を行い記録保存できるよう事業者と協議するとの回答をいただきました。
そこでまず、舞岡上郷線建設時における遺跡の存在の認識について建設部長に伺います。

田中建設部長:上郷深田遺跡につきましては、建設当時から遺跡の存在は認識しておりまして、舞岡上郷線の工事着手前の昭和61年から62年にかけて横浜市埋蔵文化財調査委員会に委託しまして発掘調査を行い、調査概報としてとりまとめました。

長谷川委員:昭和63年に刊行された上郷深田遺跡発掘調査概報を確認いたしましたが、調査概報では一部を未調査のまま埋め戻して保存したと記録があり、遺跡全体は明らかになっていません。そこで、一部を未調査のまま発掘調査を終了した理由について建設部長に伺います。

田中建設部長:建設当時、道路の工事によって遺構が失われるおそれがないことから、埋め戻して保存することを教育委員会と合意しまして調査を終了いたしました。

長谷川委員:上郷舞岡線の上郷地区は現在2車線で供用されていますが、都市計画では4車線と定められています。そのため今後拡幅工事の機会をとらえて未調査部分も文化財保護法に基づく発掘調査を行い、現状保存もしくは報告書を刊行すべきと考えます。
そこで、今後上郷舞岡線の拡幅工事を行う際は詳細な発掘調査を実施すべきと考えますが局長の見解をお伺いいたします。

高瀬道路局長:舞岡上郷線の拡幅整備は栄区上郷猿田地区における都市計画提案に基づき開発事業者が実施するため、発掘調査についても開発事業者が対応することと考えております。なお、供用済みの2車線部分につきましては報告書の刊行について教育委員会と調整してまいります。

■資料3:教育委員会関連審査(10月4日)のうち深田遺跡についての質疑詳報
注:市会HPの中継録画から該当質疑を書き起こしてあります。(文責=ブログ編集担当)

深田遺跡に関する長谷川えつこ議員の教育委員会への質疑
会議名:令和3年度決算第一特別委員会(教育委員会関係)
会議日:2022年(令和4)10月4日(火) 

長谷川委員:次に上郷深田遺跡についてお伺いいたします。上郷深田遺跡は、飛鳥時代後期から奈良時代を経て平安時代前期までのおよそ200年ものあいだ、地形を生かして営まれた製鉄遺跡です。舞岡上郷線の道路建設に伴い1986年から87年にかけて横浜市埋蔵文化財調査委員会によって発掘調査が行われ、製鉄関係の炉を中心に20カ所以上の遺構が検出されました。調査の結果は地域の歴史や文化財を解明する上で重要な歴史的資料となり、しっかりと市民に還元すべきと考えます。上郷深田遺跡は県内唯一の製鉄遺跡といわれています。そこで、この遺跡の重要性をどのように認識しているのか、生涯学習担当部長に伺います。

鈴木生涯学習担当部長:昭和61年から62年にかけて行われた発掘調査で、製鉄に関係すると考えられる遺物や炉の跡などが発見され、7世紀中ごろから9世紀前半にかけて営まれた古代の製鉄遺跡の存在を確認しております。今後、隣接するエリアで開発が予定されていますので、事業者の理解を得ながら記録保存するための発掘調査を行う予定です。

長谷川委員:上郷深田遺跡は道路建設に伴う調査においては一部発掘調査をしたものの、道路下は未調査部分もあり全体像は明らかになっていません。未調査部分は埋め戻され2車線の暫定道路が走り、調査部分は発掘調査概報のみが刊行されています。文化庁の見解では「概報だけでは正式な報告書にならない」とされています。平成19年3月に定められた神奈川県内における開発事業等に伴う埋蔵文化財発掘調査の調査基準において、発掘調査報告書は原則として発掘作業終了の翌年度から3年以内に刊行するとされており、30年以上放置されたまま自治体が発掘調査報告書を作成しないことは、あってはならないことです。そこで、調査報告書をいますぐに作成すべきと考えますが、教育長の見解をお伺いいたします。

鯉渕教育長:発掘調査報告書は、埋蔵文化財の発掘作業から整理作業に至る発掘調査全般の成果を適格にまとめたもので、発掘調査はこの報告書が適切に刊行されることによって完了いたします。舞岡上郷線の道路建設に伴う発掘調査については報告書が刊行されておりません。発掘調査による記録保存が完了していない状況ですので、事業者である道路局と報告書の刊行に向けて調整してまいります。

上郷開発NO! 埋蔵文化財保全問題(続報2)

開発事業者任せは行政の不作為だ
道路局長、市会決算委で“丸投げ”の答弁 13日

レポートが遅くなったのですが、13日(木)の市会決算第一特別委(局別審査)では、4日(火)の都市整備局&教育委員会関連に続き道路局関連案件について長谷川えつこ市議(立憲、栄区)の質疑が行われ、その中で上郷深田遺跡についての道路局の対応を質す質疑が行われました。
審査対象とした上郷深田遺跡関連の質問の要点は次の3つ。
 (1)舞岡上郷線建設時における遺跡の存在の認識
 (2)一部を未調査のまま発掘調査を終了した理由
 (3)今後の開発工事に伴う道路建設(拡幅工事)と遺跡の未調査部分の扱い

詳しくは市会HPの録画をみていただくとして、11:40のあたりから深田遺跡に関する質疑応答が始まっています。
が、あらかじめ質問が関係部署に提示してあって、それに対し用意した回答を高瀬道路局長および担当セクションである田中建設部長が読み上げるという、出来レース?な展開。
https://gikaichukei.city.yokohama.lg.jp/g07_Video_View.asp?SrchID=5192 

文書1-1

現状の「一部埋め戻して未発掘のまま道路建設を行った理由」に対し、田中建設部長は「埋め戻しで遺跡が失われることがないので、教育委員会と合意して決めた」と回答。
続く「4車線への拡幅工事の機会をとらえて、文化財保護法に基づき未調査部分の詳細な発掘調査を行うべき」という意見に対しても、道路局長は「拡幅工事は、栄区猿田地区都市計画提案に基づき開発事業者が対応するものと考えている。供用済みの2車線部分については、報告書の刊行について、教育委員会と調整していく」と、一応は前向きの答弁でした。

しかしこの間の世話人会メンバーによる市の担当者との折衝を通じて、市側答弁の問題点が明らかになっているのですね。
1)道路局と教育委員会との「合意の記録」の開示請求を行っていたが、「記録は存在せず」と不開示となった。
2)質疑の冒頭、地図で舞上線道路が遺跡包蔵地にかかっていることを提示したうえ、「4車線への拡幅工事の機会をとらえて」と道路下の遺跡調査を促しているが、道路局長は「開発業者の担当」と逃げたうえで、「供用済みの2車線部分については、報告書の刊行について教育委員会と調整していく」。つまり、4車線への拡幅部分は東急建設に調査をやらせ、既設の2車線部分は神奈川県の基準ができる前に完了しているので、基準が適用されないことを前提に、「教育委員会と調整していく」と含みを持たせているのではないか。拡幅部分を含む道路用地について、横浜市が取得済みであるならば、貴重な文化財保全の観点から、当然、開発事業者ではなく市自身が調査すべきではないか。
 
なおこの日の特別委における長谷川市議の質問項目は次の通りです。
地元選出である長谷川議員の問題提起と追及にはエールを送るものの、深田遺跡問題に限らずとかくおざなりな答弁で決算委を逃げ切ろう?とする市の今後の対応について、目先の開発事業により郊外区ならではの緑の住環境、貴重な埋蔵文化財などがこれ以上失われることのないよう、引き続きねばりづよい市政監視、働きかけが期待されます。
 1  横浜環状南線の整備推進
 2  笠間交差点改良事業の推進
 3  上郷深田遺跡
 4  バスネットワークの維持
 5  河川の安全対策の推進
 6  市民協働による川づくりと環境教育
 7  自転車の安全利用
 8  横浜マラソン
 9  コロナ禍における沿道飲食店等の路上利用の支援
10  道路を活用した財源確保の取組
11  その他

上郷開発NO! 埋蔵文化財保全問題(続報=Ver.2)

「開発ありき」の都市行政に喝!
上郷深田遺跡、記録保存へ一歩前進

4日(火)開かれた市会の決算第一特別委(都市整備局、教育委員会)の局別審査。
都市整備局関連の質疑の後、午後2時から行われた市教委関連の審査の冒頭で、長谷川悦子市議(栄区)が上郷深田遺跡について市の対応を質し、市は埋蔵文化財の記録保存に必要な手続きを完了させずにきたことを認めたうえで、隣接エリアについても「調査されないまま破壊されることがないよう発掘調査を行い、記録保存できるように事業者と協議する」と答えました。
瀬上_3872 (2)
       東京新聞 10月5日

円海山に連なる瀬上沢緑地の一画、上郷深田地区の製鉄遺跡群を圧殺するような形で推進されてきた東急建設による「上郷猿田都市計画」。
2019年2月から3月にかけて、開発事業計画の推進(強行!)に向け、あらためて舞上線沿線東側部分の試掘が行われ、炉跡などの遺構や炉壁、土師器、須恵器、鉄滓が発見されていますが、横浜市はこの試掘調査の結果、「遺跡の範囲を把握できた」として、東急建設に対して記録保存の発掘調査を行うよう指示してきた、とされています。

しかし東京新聞の一連の報道(9月15日、30日)、そして4日の市会における質疑を通して、史跡に関する調査報告書の作成という文化行政面の長年の不作為の後始末?とは別に、開発ありきの「上郷猿田都市計画」そのものに大きな疑問と課題が投げかけられました。

■4日の決算第一特別委の録画アップ
4日(火)の市会における長谷川市議の質疑の録画がHPにアップされました。
https://gikaichukei.city.yokohama.lg.jp/g07_Video_View.asp?SrchID=5118 
決算や小学校給食、子どもの貧困対策など30分余にわたる質疑のうち2番目、上郷深田遺跡についての質問では、暫定2車線の道路下の未発掘部分の調査も含め言及していますが、教育長は上郷開発計画の未発掘遺跡調査と矮小化しています。13日(木)に予定されている道路局関連の審査においては、この点を含めたた追及が望まれます。
注:長谷川市議の録画全体は約36分。このうち上郷深田遺跡については2:00~8:00です。

上郷開発NO! 埋蔵文化財保全問題(速報)

「上郷深田遺跡」危うし?
発掘調査のルール無視の開発に警鐘

過去現在未来にわたる市民の共有の財産ともいうべき「埋蔵文化財」。
開発にともなう造成工事によって姿を消す前に記録保存のための発掘調査を行うことが決められたケースでも、実測図や遺物・遺構の写真などを収録した報告書の作成がなおざりにされ、港北ニュータウン開発では発掘調査された268カ所の遺跡群のうち7割にあたる192遺跡について報告書が作られていないという、驚くべき実態が明らかになった。9月30日付けの東京新聞が大きく報じたもので、市道舞岡上郷線の仮設道路沿線一帯に眠る「上郷深田遺跡」についても言及。

この問題は4日(火)午後開かれる市会常任委でも質疑が行われる予定。
「データサイエンス」を掲げ選挙戦を制し市長となった山中市政下、担当部局である横浜市教育委員会の対応が注目される。
 東京新聞2a
 東京新聞 9月30日

注:「分析」が目的の統計学と異なり、データサイエンスは「問題を正しく捉えて解決に導くツール」とされています。山中竹春市長はコロナ対策などの市政運営にもその手法を取り入れていく、としていますが、コロナ対策の評価はさておき教育文化行政とりわけ都市開発と埋蔵文化財の保全対策にあたって、データサイエンスがどういう形でとり入れられるか‥‥。
プロフィール

上郷/署名の会

Author:上郷/署名の会
横浜7大緑地の1つ「瀬上市民の森」に連なる瀬上沢はホタルの自生地として知られ、貴重な動植物が生息する自然の宝庫です。またみどり豊かな里山風景を今に残し、古代の製鉄遺跡や江戸時代に使われた横堰などの文化遺産も眠る横浜市民共有の財産とも言うべき緑地です。
その瀬上沢に大規模な上郷開発計画が浮上したのは2005年。瀬上沢を愛し、それぞれに保全運動をしてきた市民は、2007年6月に「上郷開発から緑地を守る署名の会」を結成、開発計画の中止と緑地の全面保全を求める活動を開始し、同年12月、市内全域はもとより全国各地から寄せられた92000筆あまりの署名を添えて横浜市長と市議会に陳情書を提出しました。
2008年9月、横浜市都市計画審議会は計画を承認せず、「上郷開発事業」は中止となりました。しかし地権者でもある開発事業者・東急建設は引き続き「開発の意思」を表明。2012年1月、ついに第3次開発計画の事前相談書を横浜市に提出しました。私たち「署名の会」はあらためてこの開発プランの問題点を指摘、瀬上沢の全面保全を求めて新たな活動を開始しました。
そして2014年1月に始まった新たな動きがいま地域の住環境・自然環境を揺るがす重大な岐路に……。

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